空き家の再生とまちづくり!〜湘南を中心に空き家再生に取り組む不動産会社〜


空き家の再生とまちづくり!と聞くと、何を思い浮かべますか?

なんとなく「市役所や自治体が取り組むもの?」とイメージされる方が多いかと思います。

今回は、湘南を中心に空き家・遊休不動産の再生で地域活性化をはかる不動産会社『エンジョイワークス』事業企画部の牧(まき)さんを取材し、企業のまちづくりについて詳しくお話を伺いました!

※遊休不動産:ビルやお店など企業向けの建物で、全く使用されていない不動産
※空き家:使用されていない住宅

ちょっと風変わりな不動産会社。

エンジョイワークスは、物件の賃貸や売買の仲介事業をメインとする不動産会社ですが、古民家のリノベーションや建築のデザイン・提案、空き家再生のための投資型のファンド、次世代まちづくりオンラインスクールの運営など多岐に渡る事業を行っています。

不動産会社といえば、お客様に物件を紹介することからはじまるお仕事です。

一方でエンジョイワークスでは、まず初めに「自分の住むまちを好きになってもらう」ことを大切にされています。

お客様に住む家だけでなく、住むまちの人や独自の雰囲気などまちの魅力・居心地の良さを感じてもらうことがまちに長く住んでもらうことに繋がり、その広がりが地域をより良くすると考えています。

代表の福田さんが神奈川県葉山町に引越された時に、葉山町の人の温かさや豊かなコミュティに感銘を受け、この魅力をお客様にも知ってもらいたい!と、人がよく集まる友人のBBQ会場にお客様をお誘いするなど、物件を紹介する前にまちの魅力に触れることができる機会をつくられていました。

今も会社全体で、お客様にまちの魅力を知ってもらうことに重きを置いています。

地域のクリエイターを巻き込んだ土地の利活用プロジェクト

エンジョイワークスの象徴的な土地の利活用プロジェクトは、2015年に行われた「葉山小屋ヴィレッジ」の建設。
※現在は、他社が運営する宿泊施設The Canvas Hayama Park

買い手がなかなか決まらず長い間使用されていなかった葉山町の大きな土地に、6つの小屋とお庭のスペースを設け、ワークショップや移動式のカフェなどが出店できるイベント会場を作りました。

地域のクリエイターを巻き込んでイベントを定期開催することにより、多くの人が会場に足を運ぶようになり地域は盛り上がりました。この経験から地域活性化のやり甲斐や面白さを感じ、エンジョイワークスでは空き家・遊休不動産の再生などまちの課題解決と地域活性化を目的とした事業が活発になっていったそうです。

古民家再生「平野邸Hayama」

葉山町にあるスペース利用もできる一棟貸しの宿泊施設『平野邸Hayama』は、エンジョイワークスが再生した築80年の古民家。

最後に住んでいたお婆さんの姪っ子さんの、「幼少期によく訪れた大切なお婆ちゃんの家を失いたくない」という強い想いに大家さんも共感したため、住宅は壊さず残すことになりました。

リノベーションの資金は、全国で増加する空き家や遊休不動産の再生を目的としたまちづくりのための共感投資ファンド「ハロー!RENOVATION」で集められました。
※ハロー!RENOVATION:エンジョイワークスが運営する、空き家や遊休不動産と事業を行いたい人をつなぎ、想いのある投資によってリノベーションを推進する参加型プラットフォーム

空き家など使用されなくなった建物は、宅地にして売ってしまった方が手間はかからず簡単ですが、建物、特に古民家にはそれぞれのドラマや想いがあります。

そのそれぞれの想いを大切に丁寧に掘り起こし、その想いをしっかりと伝えることで人の協力や共感が生まれ、建物が再生されていきます。

平野邸Hayamaのファンドでは1530万円が集まり、宿泊施設としても近隣の方にも開かれた多世代交流の場としても多くの方利用する古民家に再生されました。

 現在では、都内近郊からお子様連れのご家族や20代のグループ利用を中心に宿泊施設として安定的に稼働するようになり、地域の料理人の方が料理を振る舞うサービスが利用されるなど、地域と外から来る人の交流の場として盛り上がっているようです。

鎌倉市との協力「旧村上邸-鎌倉みらいラボ-」

鎌倉市にある明治末期に建てられた伝統的な様式の和風木造住宅「村上邸」

敷地内には能舞台や茶室があり、能や謡曲の会・茶会などが行われていました。

元所有者の村上さんの「この景色を鎌倉に残したい」という想いから、村上邸は平成28年に鎌倉市に寄贈され、鎌倉市景観重要建築物にも指定されています。

しかし市では、その後の運用管理や資金面での課題があり、村上邸の持続可能な活用のために運営ができる民間企業を募集する公募型プロポーザルを行いました。

運営事業者としてエンジョイワークスが選ばれ、村上邸は企業研修所・地域コミュニティ施設として「旧村上邸-鎌倉みらいラボ-」にアップグレードされました。

※現在は、エンジョイワークスの子会社「株式会社グッドネーバーズ」が運営しています。

業務委託として市が事業者に対しお金を払うことが一般的ですが、エンジョイワークスは市に家賃を払って運営しています。

旧村上邸-鎌倉みらいラボにて開催するエンジョイワークス主催のイベントに、行政の方が登壇するなどお互いに協力し合っています。

まちづくりはお金が目的ではないため、関わる人とお金ではない形でうまくコミュニケーションを取り、みんなにとってプラスの影響を与えていくことがポイントです。

みんなで一緒にまちづくりを

エンジョイワークスのモットーは、「みんなで一緒にまちづくりを」

地域にまちづくりを根付かせるには、地域の方に「単純に空き家を宿泊施設にした」などではなく、「地域を盛り上げるためにみんなで作り上げた」という心もちを持ってもらうことが重要です。

そのため、空き家・遊休不動産の再生を行う前に、どんなものに再生するのが良いか地域住民とブレストを行う参加型イベントが頻繁に開催されているそうです。

まちづくりのジブンゴト化は、”まち”や”そこに住む一人ひとり”の暮らしの豊さに繋がると考えられています。

自分の住むまちを深掘りすると、面白い歴史があったり、面白い人がいたり、コミュニティが育まれていたりと、様々な発見をすることができます。

空き家は、人がいない事でごみが放置されたり、犯罪が起きないか心配されたり、どこかネガティブに捉えられがちですが、手の加え方次第で地域が繋がる拠点となり、安心安全な楽しいまちを築くための可能性の種なのだと教えていただきました。

著者:田中